1981 年 30 巻 10 号 p. 969-975
川崎病患者急性期血漿中に存在する免疫抑制因子について, mitogen刺激によるリンパ球の^3H-TdR取り込みを指標として検討を加えて, 以下の結果を得た.1) 各種stimulantを用いて抑制因子の効果をみると, PHA-P, Con A, PPD, MLR刺激の場合は患者血漿添加により著明に^3H-TdR取り込みの抑制がみられたが, PWM, protein A刺激においてはごく一部にしか抑制がみられなかった.2) 患者血漿濃度増加とともに抑制効果は増強した.3) stimulantの濃度, 培養日数に関係なく本血漿による抑制効果は出現した.4) 本因子は培養開始後早期に加えた場合のみ抑制効果が出現した.5) 本因子は洗浄により容易に細胞から除去でき, 細胞に対する障害性もなかった.6)本因子の作用点は主としてT細胞に働き, 単球は抑制効果発現にあまり関与していなかった.これらの結果により, thymosin V-1はPHA-P誘導によるTリンパ球コロニー形成を促進させるが, この現象は細胞内のDNAやcyclic nucleotidesの合成と相関していなかった.