アレルギー
Online ISSN : 1347-7935
Print ISSN : 0021-4884
ISSN-L : 0021-4884
Dirofilaria immitis感染が疑われたTropical Eosinophiliaの1症例
猪熊 茂子佐々木 智也渋谷 敏朗荒木 国興
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 30 巻 11 号 p. 1071-1076

詳細
抄録

症例は31才男子, 大学院研究生.1978年8月よりマレーシアのジャングル内に, 研究目的で現住民とともに居住, 翌年2月頃より夜間の咳, 呼吸困難発作がはじまった.同年8月帰国後も症状は持続し, 翌年4月当科受診.家族歴, 既住歴に特記事項なし.現症では両側鼡径部リンパ腺が数個無痛性に腫大するほか特記事項なし.検査所見の主なものは, 末血好酸球数3655, IgE7850mg/ml, 便虫卵(-), 12種類の寄生虫抗原に対する沈降反応は, Dirofilaria immitis(D.i.), Toxocaracanis, Ascaris suumに沈降線を認め, D.i.抗原を用いた補体結合反応では160倍以上と著しく高い抗体価を示した(対照は10倍以下).同じくELISAでは1280倍(対照は40倍以下).RASTは, 608(対照は34)と高値, 深夜採血の血中ミクロフィラリア(-).レ線像は異常なし, 受診後, β_2-stimulantの内服吸入を行い発作は軽減.所見よりD.i.によるtropical eosinophiliaを疑い, diethylcarbamazine citrate 350mg/日, 12日間投与を行った.内服中より著効があらわれ, 発作は完全に消失し, 1981年1月現在再発していない.また, 好酸球数は減少し700前後となり, 補体結合反応の抗体価も80倍まで低下している.

著者関連情報
© 1981 日本アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top