1983 年 32 巻 2 号 p. 72-79
Steptomyces conglobatus産生の新Ca ionophore, ionomycinは, A23187に比してCaに対してより特異性が高いとされる.両者のラット腹腔からSRSおよびhistamine遊離の比較と, 年令およびpHの影響を検討した.ionomycin 0.1-1μg/mlは, SRSおよび histamine遊離を用量依存的に増強したが, A23187に比して弱かった.ionomycinおよびA23187のSRS遊離は, ラット週令と共に減少傾向を示したが, histamine遊離は著明に増加した.ionomycinのSRS遊離は, 10分で最大に達し, 40分で約1/3にまで減少したが, histamine遊離は5分で最大に達し, 以後徐々に減少した.ionomycinのSRS遊離は, pH上昇に従って増強し, histamine遊離は, pH上昇と共に抑制傾向を示した.以上の成績より, ionomycinのラット腹腔からのSRSおよびhistamineの遊離能は, A23187に比して弱く, SRSとhistamineの遊離の間に必ずしも平行関係が認められないことから, ionomycinによるSRS産生には, A23187の場合と同様に, 肥満細胞以外の細胞の関与が大きいことが示唆された.