アレルギー
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気管支喘息児に対する道路粉塵の影響
森川 利夫
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1985 年 34 巻 5 号 p. 297-304

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抄録

凍結道路でのスリップ防止のために用いられるスパイクタイヤによる道路粉塵が気管支喘息児にいかなる影響を与えるかについて調査した.道路粉塵による汚染地区の仙台市中心部の5小学校と非汚染地区の仙台市周辺部の5小学校の気管支喘息児童に, 気管支喘息調査表と, 冬・夏それぞれ4週間の喘息日誌を記載させた.そして, その喘息調査表より, 年齢・性別・寝具・暖房器具・発作の好発時期・発作誘因・原因抗原・治療法・常用薬などに関して全く同じであることの判明している中心部及び周辺部両群の気管支喘息児について, 喘息日誌を検討した.喘息発作点数は夏期には中心部群と周辺部群に差はなかったが, 冬期においてはx^2検定により危険率が0.05<p<0.1と推計学的に有意とはいえないが中心部群に高い傾向を示した.粉塵量は冬期においてのみ中心部で周辺部より高いのに反し, NOx及びSO_2は夏期にも中心部に高い事から, 冬期においてのみみられた発作点数の差は粉塵によるものと推定された.また, 冬期における中心部群の発作点数は3-5日前の浮遊粉塵量と有意の相関を示し, 4日前のNOx・SO_2と相関する傾向が認められた.このことより, 喘息の発作点数は4日前のこれらの3つの汚染物質との多元相関関係にあると考えて, それぞれと喘息発作点数との偏相関係数を計算した.その偏相関係数は3者とも有意水準を割るが, その中でも, 浮遊粉塵の発作点数に対する偏相関係数が最も高かった.したがって, 冬期には浮遊粉塵, NOx・SO_2の3者が重複して気管支喘息児の発作を増大させることになるが, その中でも浮遊粉塵が主要な役割を果たしているものと考えられた.

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© 1985 日本アレルギー学会
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