1986 年 35 巻 1 号 p. 40-46
ethylenediamine(EDA)は, 化学工業で溶媒として用いられるsimple chemicalsの1つとして, 主にimmediate asthmatic responses (IAR)を起こすことが知られている.われわれは, 同じ工場でEDAを職業性に取扱う人にみられたlate asthmatic responses (LAR)の患者を2例経験し, 1)数カ月のEDA暴露の後, 咳嗽, 喘鳴, 呼吸困難を自覚し, その症状発現がEDAの吸入暴露と密接な関連を有する.2)これらの喘息は, 臨床所見, 吸入試験などからLARであると考えられる.3)皮内反応やPK反応でも特異的IgE抗体を検出できず, 沈降抗体も陰性で, 貼布試験も陽性を示さなかったことなどを確認しえた.以上より, 本例のLARの発現機序は, I型などのアレルギー反応よりは, むしろEDAのirritant作用のような他の作用によるものと考えられた.