1986 年 35 巻 11 号 p. 1072-1078
喘息児, 喘鳴児, 遷延性咳嗽児を対象に, ウイルス血清学的調査を行った.935名(喘息754名, 喘鳴127名, 遷延性咳嗽54名)の対象より, 71名のrespiratory syncytial virus(RSV), 56名のparainfluenza, 28名のadeno, 18名のinfluenza virus感染症が4倍以上の血清抗体価の上昇で診断された.ウイルス感染は年小児に多く(1歳未満の喘息児の43.8%, 1歳未満の喘鳴児の44.8%), 加齢と共に減少した.喘息発作や喘鳴に関与する二大ウイルスは, RSVとparainfluenzaであった.RSVの多くは年少児の喘息, 喘鳴の経過中に証明され高率に肺炎や熱を伴った.全RSV感染の47.1%が喘息の大-中発作と関係した.Parainfluenzaやadenoは各年齢に感染がみられ, 大中小の喘息発作と関係し, parainfluenzaの43.4%, adenoの33.3%が喘息の大-中発作と関係した.Influenzaはそれぞれの年齢に感染がみられ小発作や咳と関係した.これらのウイルス感染症の病態は, ウイルス自体の病原性によるというより, その感染をうけた児の年齢による影響が大きいようであった.