アレルギー
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免疫系による生体の統御 : PolyI:Cで活性化したガラス膠着性脾細胞の静注によって起こる肝再生の抑制
竹下 俊行
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1986 年 35 巻 3 号 p. 211-219

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抄録

polyI:Cで2時間処理した脾細胞を肝部分切除を行った同系マウスに静注すると, その肝再生が抑制された.抑制の程度は静注した脾細胞数と処理に用いたpolyI:Cの濃度に依存していた.肝の再生を抑制する活性はガラス膠着性脾細胞(マクロファージ系細胞)に強く, T細胞には認められなかった.polyI:Cで活性化したガラス膠着性脾細胞をpolyI:C非存在下でさらに24時間培養すると抑制活性は減弱するが, indomethacinを添加しておくと抑制活性が維持された.この際, 培養上清のIL-1活性もindomethacin添加群で有意に高く, この抑制が, これらの細胞が生体内に運び込むpolyI:Cの量のみに依存するのではなく, 細胞の活性化の程度に依存するものと思われた.さらに, 活性化脾細胞を静注したマウスの示す肝再生のパターンは, 再生ピークが非静注群に比し24時間遅れる以外は同一であることから, この肝再生の抑制は, 再生能力の消失ではなく再生の遅延を意味していた.このことは活性化した免疫系が臓器の再生を制御する可能性を示唆している.

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© 1986 日本アレルギー学会
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