1987 年 36 巻 4 号 p. 205-212
金チオリンゴ酸(金)が尿細管基底膜(TBM)抗原に対する免疫応答および間質性腎炎(IN)発症にいかなる影響を与えるかを検討した.実験動物はTBM抗原に対し強い免疫応答を持ち, INの発症しやすいBALB/cマウスと, 逆にINの発症し難いC57BL/6マウスとを用いた.両系マウスにTBM抗原免疫と平行して金を短期間投与した.金, TBM抗原同時投与により抗TBM抗体の強い上昇を伴う典型的なINの発症をC57BL/6に認めた.逆にBALB/cにおいてはINの発症および抗体産生が著しく抑制された.ナイロンウール非付着細胞のTBM抗原に対する幼若化反応をみると, BALB/cの高い反応性は金により抑制され, C57BL/6の低い反応性は強い変化を受けなかった.附着細胞の中に非附着細胞の幼若化反応を抑制するT細胞分画があり, この抑制作用はC57BL/6で著しく強かった.金を投与すると両系にてこの抑制作用は減弱し, 特にC57BL/6で著しかった.以上より金は場合によっては表現形としての免疫反応を増強させる可能性があることが示された.