1988 年 37 巻 9 号 p. 911-918
気管支喘息患者19例のBAL液中のカリクレイン様活性を測定し, 気管支喘息の病態成立機序に対し, カリクレイン-キニン系が関与する可能性があるか否かを検討した.カリクレイン様活性の測定は, BAL液をセントリコン10で5倍に濃縮後, 特異合成基質(S2302, S2266, S2222)を使用し, アミダーゼ活性で, 一部の症例ではradiochemical法でも測定した.LARを示す症例では, 非誘発時でさえIARを示す症例に比較して有意の高値を示した.その活性は測定に使用した基質特異性, SBTIやトラジロールで抑制されること, PAGE後の活性の移動度が血漿カリクレインに一致すること, 同時にBAL液中にキニン生成能が検出されたことなどから, 血漿カリクレインであると推定された.LARを示す症例でのBAL液中の血漿カリクレインの高値は本来のキニン生成作用に加え, そのNCF活性による気管支肺胞反応局所への好中球の集積やスーパーオキサイドの生成促進作用を介し, LARの誘発機序およびその反応の修飾になんらかの係わりを有している可能性がある.