アレルギー
Online ISSN : 1347-7935
Print ISSN : 0021-4884
ISSN-L : 0021-4884
イセエビ網漁業従事者にみられる海産腔腸動物アカトゲトサカによるアレルギー症状
鬼塚 黎子井上 謙次郎神谷 久男
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 39 巻 3 号 p. 339-347

詳細
抄録

われわれはイセエビ網漁師に発症するアカトゲトサカによる気管支喘息の2症例に遭遇し, アレルギー学的検討を加え, 同業者72名についても調査し, それらの概要を報告した.宮崎県大平洋岸のイセエビ漁師で毎年9月解禁から4月15日までのイセエビ漁期に捕獲物を網からはずす作業により, くしゃみ, 鼻汁, 咳嗽, 喘息発作, 眼結膜の充血, 腫脹及び接触部位の皮膚炎をおこす症例を経験した.漁期であってもトゲトサカ(海産腔腸動物)が捕獲されない日は発症しない.アンケート調査により同業者は眼, 皮膚症状は100%に認められるが気管支喘息は9%が発症し鼻症状は39%に認められる.アカトゲトサカ生食水抽出画分による皮内反応はイセエビ漁師喘息例は即時型遅延型とも強陽性, 他職種喘息10例では遅延反応は陰性, 即時反応は一部が陽性, 健常者5例はともに陰性であった.アカトゲトサカはヒトに対し, 感作原性をもちアレルギー症状をおこすことが推察され同時にトキシンの直接作用を併せもつことが考えられる.アカウミトサカに起因すると考えられる本アレルギーは作業構造の変化によって生じた職業アレルギーと考えられる.

著者関連情報
© 1990 日本アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top