1990 年 39 巻 7 号 p. 587-594
低分子化合物(TNBS, CET, 4-AAP)とその蛋白結合物(TNBS-OA, CET-OA, 4-AAP-OA)につき, これらの免疫原性の本質を追究すべく, ウサギを用いて体液性(HA), 細胞性(DTH)両免疫反応を指標にして比較検討を行った.その結果, TNBSの免疫原性は, CETあるいは4-AAPのそれとは異なるパターンを示し, なかんずく蛋白結合物検体の免疫群におけるDTHの出現に大きな違いが見い出された.すなわち, TNBSーOA+FCA免疫群ではDTHにおいて強度の陽性反応が認められたのに対し, CET-OA+FCAと4-AAP-OA+FCAの両免疫群ではいずれも陰性であった.この解釈として, CET-OA+FCAまたは4-AAP-OA+FCA免疫群ではDTHの免疫特異性がハプテンとともに, キャリア-蛋白の一部に対して向けられていると一般的に言われていることから, CETまたは4-AAPそのものの惹起では陽性反応が出現せず, 一方, TNBS-OA+FCA免疫群のDTHではTNBSを皮膚に塗布すると表皮蛋白と結合物を生じ, 結果的にTNBSー蛋白結合物で惹起したことになるため, 陽性反応が認められたものと考察した.