1991 年 40 巻 7 号 p. 680-688
マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)を細胞外ATPおよびその代謝産物で刺激すると細胞内カルシウムの一過性の上昇後, イノシトール3リン酸やロイコトリエンC_4の生成を伴ってヒスタミン遊離反応が認められた. 他のプリン誘導体でも同様な反応が認められ, その時のヒスタミン遊離惹起能はATP>ADP>AMP>アデノシンの順であった. また, これらの物質を0.1ng/mlのDNP-HSA抗原あるいは50μMのATPと同時にBMMCに添加するとヒスタミン遊離を相乗的に増強させた. この時の増強作用はアデノシン>AMP≫ADP=ATPの順であった. アデノシンによるATPで刺激したときのヒスタミン遊離増強効果は百日咳毒素処理により抑制されたが, ATPによるヒスタミン遊離反応は同様の処理により抑制されなかった. これらのことより, ATPによるヒスタミン遊離作用およびアデノシンによるヒスタミン遊離増強作用はそれぞれ異なった刺激伝達系を介することが推測された.