1992 年 41 巻 12 号 p. 1710-1716
肥満細胞のモデル細胞系であるラット好塩基球性白血病細胞 (RBL-2H3) を用いて, 抗原刺激とイオノマイシン刺激によるセロトニン分泌応答における蛋白質のチロシンリン酸化とイノシトールリン脂質代謝について検討した. 両刺激ともセロトニン分泌応答は類似しており, 共に分泌と並行して72KDaの蛋白質のチロシンリン酸化の経時的な増加がみられた. 抗原刺激ではイノシトールリン脂質の代謝亢進が見られ, ホスホリパーゼC-γのチロシンリン酸化の増加を認めたのに対して, イオノマイシン刺激ではイノシトールリン脂質代謝は変化しなかった. 抗原刺激とイオノマイシン刺激では異なる経路で細胞内Ca^<2+>の増加を引き起こすことが考えられ, 両刺激で72KDaのチロシンリン酸化蛋白質が増加するのは細胞内Ca^<2+>の増加に伴うチロシンキナーゼの活性化によるためと考えられた. 以上よりRBL-2H3の分泌応答には, チロシンキナーゼの活性化が重要であり, 蛋白質のチロシンリン酸化が関与していることが推察された.