1993 年 42 巻 10 号 p. 1576-1584
toluene diisocyanate (TDI)の酢酸エチル溶液をモルモットの鼻腔粘膜に7日間連続塗布してモルモットを感作し, さらに7日ごとにメトピロン投与後にTDI溶液を同様に塗布することにより, 遅発型喘息反応(LAR)が高率に惹起される喘息モデルを作成し得た. このモデルでLAR時の気道の炎症細胞の動態を気管支肺胞洗浄(BAL)により検討した. 即時型喘息反応直後(誘発30分後), LAR時(3, 6時間後), LAR後(24, 168時間後), LAR陰性例(3時間後), 対照群(酢酸エチルのみを塗布した6時間後)の7群でBALを行ったところ, LAR時(3, 6時間後)とLAR後(24, 168時間後)の4群のBAL液で, 対照群, LAR陰性群と比較して好酸球数の有意な増加を認めた. 好酸球数は誘発6時間後がピークであった. 他の炎症細胞には有意な変動を認めなかった. 以上より, 本モデルのLARに好酸球が重要な役割を果していることが示唆された. ヒトTDI喘息のLARと異なり好中球の関与は否定的と考えられた. 本モデルはTDI喘息の病態, 特にLARと気道炎症の関連を究明するにあたって極めて有用と考えられる.