1993 年 42 巻 11 号 p. 1692-1700
toluene diisocyanate (TDI)喘息は誘発試験にて遅発型喘息反応(LAR)を生じやすいことが知られている. 通常の吸入性抗原により惹起されるLARと異なりTDI喘息におけるLARの発現には好酸球より好中球の方が重要な役割を果たしているという考えが従来, 主流をしめていた. TDI喘息におけるLARの病態を明らかにするために能動感作によるモルモットLARモデルを作成し, 誘発後の気道組織における炎症細胞の動態をLARを中心に検討した. 10%TDI酢酸エチル溶液をハートレー系雄モルモットの両側鼻粘膿に7日間連続で塗布し, その1週間後から5%TDI溶液を1週間に1回の割合で塗布することにより喘息反応を惹起させ, 誘発30分, 3時間, 6時間, 24時間, 168時間後に解剖を行った. 酢酸エチルのみを塗布した群を対照とした. LAR発現直後やLAR持続時に解剖したモルモットの気道にのみ高度の好酸球浸潤を認めたが, 好中球浸潤はすべてのモルモット気道にほとんど認められなかった. 従来の報告と異なりTDI喘息のLARにおいても通常の吸入性抗原のLARと同様に好中球より好酸球が中心的役割を果たしていることが示唆された.