我が国における成人気管支喘息の30%を占める高齢者喘息患者(60歳以上)の特徴をアレルギー反応の観点から検討した. 高齢者喘息患者においては, 1. 即時型皮内反応陰性例が多く, 陽性例においても一人あたりの陽性抗原数は少ない. 2. ハウスダスト, ダニ, スギ等主要な抗原に対する即時型皮内反応陽性率は年齢とともに減少し, 高齢者では著減する. 3. カンジダに対する即時型皮内反応陽性率は年齢による変動は少なく, 高齢者ではかえって増加する. 50歳以上では陽性率第1位であり, カンジダ単独陽性例が多い. 4. 皮内反応陽性例における血中IgE抗体の陽性頻度, 吸入誘発反応・眼反応陽性頻度, 末梢白血球ヒスタミン遊離反応陽性頻度は若年喘息群と変わらない. 以上の事実から, 高齢者喘息ではアトピー型関連喘息の頻度は少ないが, その内容は若年者と変わらない(カンジダを除く). しかし, 高齢者喘息においては加齢により新たにアトピー素因を獲得する可能性を含めて, 若年喘息群とは別の観点からアレルギー反応を考えることが必要と思われる.