1996 年 45 巻 7 号 p. 627-636
好塩基球や肥満細胞はFc_εRIを発現しており, これらの細胞の活性化が慢性アレルギー性炎症を誘導することが知られている. 我々は, 末梢血好塩基球に結合するIgEをフローサイトメトリーにより測定し, その臨床的意義について検討した. 末梢全血をFITC標識抗IgE抗体で染色, 単核球領域のうちFITC陽性の細胞に関してその蛍光強度を測定した. 好塩基球結合IgEは加齢とともに増加し, 成人でほぼ一定の高値を示した. アレルギー疾患群では, 乳児期よりすでに正常対照群に比し, 高値を示した. また喘鳴を繰り返す乳児も高値を示す例を多く認め, 生後早期に好塩基球感作が成立する可能性が示唆された. 好塩基球結合IgEは血清IgE濃度とよく相関したが, IgE濃度300ng/ml以上ではほぼ一定の値を示し,ー定の血清IgE濃度で好塩基球表面のIgE結合能が飽和する可能性が示唆された. このように, フローサイトメトリーによる好塩基球結合IgEの測定は, 末梢血に微量に存在する好塩基球の性状の解析を可能とし, アレルギー性炎症の病態を評価する上で有用な指標となると考えられた.