アレルギー
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モルモット慢性喘息モデルにおける気道壁肥厚の検討 : 反復抗原曝露および非特異的反復刺激との比較
中野 康弘戸田 正夫吉田 稔相良 博典
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2000 年 49 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

気管支喘息の基本的病態は, 単なる気道の可逆性攣縮ではなく, 好酸球, 活性化Tリンパ球, 肥満細胞などの様々な炎症性細胞が関与する慢性の気道炎症であり, 炎症によって気道反応性が亢進し, さらに不可逆的な気道の器質的変化(リモデリング)が生じると考えられている.すでに我々は卵白アルブミン(OA)24週にわたる長期曝露により気道壁肥厚を伴う慢性喘息モデルを確立している.今回, アセチルコリン(ACH)による反復刺激を行い気道形態に与える影響を検討した.Hartley系雄モルモットを3群に分け, 1群は, OA10日間連続吸入による感作の後, 週1回同様に反復吸入曝露を24週間継続した.2群はACH313μg / ml, 2分間吸入を週1回, 24週曝露し, さらに3群はコントロールとして, 溶媒の生食のみ同期間, 同様に吸入曝露した.最終曝露5日後に気管, 肺を摘出し, 気道横断面積を計測した.長期抗原反復曝露では, コントロールと比較し, 気道の上皮・上皮下層および平滑筋層と共に, 基底膜層の肥厚が認められた(それぞれ0.079±0.014, p=.0083;0.137±0.026, p=.0008;0.0024±7.975×10^<-5>μm, p<.0001).ACH反復曝露では, 上皮・上皮下層および平滑筋層の肥厚はコントロールと比較し有意差は認めず, 基底膜層の肥厚も認めなかった(それぞれ0.051±0.008, p=.4453;0.059±0.013, p=.5168;0.0017±5.034×10^<-5>μm, p=.0807).以上の結果より基底膜層肥厚だけでなく, 気道平滑筋層の肥厚は機械的反復収縮反応だけでは生じず, これらの肥厚には抗原を介したアレルギー性炎症の存在が重要であることが示唆された.

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© 2000 日本アレルギー学会
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