アレルギー
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牛乳アレルギー児の腸内細菌叢とそれに及ぼすラフィノース添加カゼイン分解乳の影響
服部 和裕笹井 みさ山本 明美谷内 昇一郎小島 崇嗣小林 陽之助岩本 洋八重島 智子早澤 宏紀
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2000 年 49 巻 12 号 p. 1146-1155

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抄録

カゼイン分解乳(MA-1)を飲用している牛乳アレルギー患者の腸内細菌叢を, ビフィズス菌増殖因子であるラフィノース添加カゼイン分解乳(MA-1〔R〕)飲用後とで比較検討した.MA-1を2週間哺乳後MA-1〔R〕を2週間哺乳し, おのおのの便について, 腸内細菌叢を検索した.対象は, 母乳あるいは通常の育児用ミルクを, 継続的に哺乳していた3例(BM群)と, MA-1およびMA-1〔R〕のみを哺乳していた11例(TF群)の計14例で, この2群にわけて解析した.BM群では全例でBifidobacteriumが最優勢菌として検出され, その菌数と占有割合は, MA-1からMA-1〔R〕への切替えに際しても高値のまま推移した.一方, TF群ではBM群と比較して, Bifidobacteriumの菌数および占有割合とが顕著に低かった.さらにTF群では, MA-1からMA-1〔R〕への切替えに伴って, Bifidobacterium菌数および占有割合は有意に増加し, Enterobacteriaceae菌数および占有割合は有意に減少した.また, MA-1飲用時に高率に検出されたClostridium perfringensは, MA-1〔R〕へ切替えることによって減少した児が多かった.MA-1〔R〕の腸内細菌叢改善効果は, MA-1の改良に伴うカゼイン加水分解物の含量低減やヌクレオチドの配合が影響している可能性もあるが, ラフィノースのビフィズス菌増殖作用に強く起因するものと思われる.今回の検討では, カゼイン分解乳が臨床症状に悪影響を及ぼすことはなかったが, 今後はこのような腸内細菌叢の調整が, 食物アレルギーの治療に与える影響について, 臨床症状の面から検討を進める必要がある.

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© 2000 日本アレルギー学会
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