ロイコトリエンはアラキドン酸を起点とする代謝産物のひとつであり, 近年, 気管支喘息などアレルギー, 炎症性疾患の発症機序において重要な役割を果すことが報告されている. アラキドン酸カスケードの代謝産物であるエイコサノイドは, ごく微量で多彩な生理活性作用を呈するのが特徴である. 呼吸器系においても, エイコサノイドは極めて重要な生理的意義を有することが示唆されている. 例えば気管支喘息は, 気道平滑筋収縮, 血管透過性亢進, 血管拡張等による気管支収縮を主体とする病態であり, 種々の化学物質が複雑に関与していると考えられるが, 近年, 特にトロンボキサン, ロイコトリエンなどのエイコサノイドが重要な発症因子とされ, 有効な治療標的となりつつある. また, ARDSや肺線維症などの炎症性肺疾患においても, ロイコトリエンなどのエイコサノイドが発症に関わる可能性が推察されている. 近年, ロイコトリエン生合成系に関わる酵素(細胞質型ホスホリパーゼA2など)やロイコトリエン受容体を標的とした遺伝子改変マウスが次々と作成され, ロイコトリエン研究は急速に進展しつつある.