アレルギー
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アトピー性皮膚炎と皮膚のバリア機能
田上 八朗
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2005 年 54 巻 5 号 p. 445-450

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抄録

乾燥した地上に暮らす動物では, 生体組織に必須の水分が失われ乾燥により生命活動ができなくなることを防ぐため, 身体の表面に水も通しにくい防御構造, すなわちバリアの存在が必要である. 実際には生きた皮膚組織にも約70%の水分がなくてはならず, その表面を厚さわずか10〜20μのポリエチレンのラップのような薄い膜状構造物のバリア, すなわち角層(stratum corneum)がくまなく覆うことで, 環境への水分喪失が防がれている. 角層は皮膚の表皮を構成するケラチノサイト(keratinocyte)が少なくとも2週間かけて, ゆっくりと分化して, 無構造な1μ程の厚さしかない平たい角層細胞(corneocyte)に変わり, 緊密に積み重なってできあがったバリア機能の十分備わった構造をしている. 表皮, 真皮, 皮下組織からなる皮膚の組織の中では, 一般的には動物の皮膚から剥いで造られた革製品を見慣れているため「皮膚は生体を防御する革袋」, すなわち, 身体内部の筋肉, 骨, 内臓を包む一方, 環境からの機械的外力への防御をするという点で, コラーゲン繊維主体の結合組織である真皮がもっとも重要であるかのように思われやすいが, 生命保持という生存への根本的な必須条件からは, 皮膚表面のバリア機能の優れた角層を造る, 薄くて脆い表皮こそが, 最重要な組織である1).

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© 2005 日本アレルギー学会
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