2008 年 57 巻 5 号 p. 552-557
アミノ酸調整粉末単独で哺育されていたため,ビオチン欠乏をきたした4ヵ月女児例を報告した.患児は生後2週に牛乳蛋白アレルギーと診断され,アミノ酸調整粉末治療により症状は改善した.治療開始の約3週間後に発症した皮膚のびらんは,眼周囲,口唇,頸部,臀部に認められ,軟膏などの局所治療で改善しなかった.血清ビオチン値の低下と尿中有機酸排泄の増加を認めたため,ビオチン欠乏によるマルチプルカルボキシラーゼ欠損症と診断した.血清ビオチニダーゼ活性は正常範囲内だった.皮膚症状,血清ビオチン値,有機酸尿はビオチン1日1mgの内服により劇的に正常化した.アミノ酸調整粉末にはほとんどビオチンが含まれていないことから,これのみで哺育されている難治性皮膚炎の症例ではビオチン欠乏を考慮する必要がある.