アレルギー
Online ISSN : 1347-7935
Print ISSN : 0021-4884
ISSN-L : 0021-4884
10%高張性食塩水15分間吸入誘発喀痰法による喘息安定期の末梢気道炎症評価(第4回日本アレルギー学会学術大会賞受賞論文)
大林 浩幸足立 満
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 57 巻 8 号 p. 1000-1011

詳細
抄録

【背景・目的】喘息末梢気道炎症治療の重要性が認識される中,その評価法として,10%高張性食塩水15分間吸入誘発喀痰法(10%15分間誘発法)の有用性を検討した.【方法】健常者16名,無症状の喘息安定期患者29名を対象に,5%・10%高張性食塩水吸入時の喀痰誘発率と喀出時間を調べた.早期相と遅発相喀痰のsurfactant protein D (SP-D)値とeosinophil cationic protein (ECP)値を測定し,肺機能測定と患者アンケートも行った.【結果】健常者群,喘息安定期患者群の10%食塩水の誘発率は5%と比べ有意に高く,各々75.0%(p=0.004),75.9%(p=0.007)であった.健常者群・喘息安定期患者群とも,遅発相喀痰のSP-D値は早期相喀痰と比べ有意に高値であった(各p=0.045,p=0.007).喘息安定期患者群の遅発相喀痰SP-D値はECP値と有意に相関した(r=0.527,p=0.017).喘息安定期患者群18名(62.1%)の1秒率は,10%食塩水15分間吸入終了直後に2.9±2.5%低下していたが,その15分後に回復した.両群とも7〜8割以上が10%15分間誘発法は負担がなく,塩辛くないと答えた.【結語】10%15分間誘発法で得た遅発相喀痰は,喘息安定期患者の末梢気道炎症の評価に役立つ可能性がある.

著者関連情報
© 2008 日本アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top