2012 年 61 巻 2 号 p. 215-223
症例は30歳,女性・喘息と食物アレルギーの加療目的で来院した.過去に2回,モモで重症のアナフィラキシーを呈し,全ての果物を除去していた.血清総IgE値は61IU/mlで,特異的IgE抗体はハウスダスト,イヌ,モモで陽性だった.Prick-prick testはモモで最強陽性を示した.負荷試験はモモ6.5gで呼吸困難が誘発された.喘息に対して高用量の吸入ステロイド・長時間作動型β刺激薬の配合剤とロイコトリエン括抗薬を投与したが重篤な症状が遷延した.そこで,喘息の完全なコントロールを目的としてomalizumab150mg/bodyを4週間毎に投与した.同治療を開始した後,喘息の症状やピークフロー値は著しく改善した.食物アレルギーに関しては患者より除去解除の希望があり,一定間隔ごとにモモの負荷量を漸増して負荷試験を行った.Omalizumabの投与28週後に白桃290g(2個)を症状の誘発なく完食し,その後モモの除去を解除したがアレルギー症状の再発は認めていない.本症例では,omalizumabは喘息のみならず食物アレルギーにも治療効果を認めた.