アレルギー
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1. アレルギー反応を抑制する新しい受容体, Allergin-1(XIV. アレルギー基礎研究の最近の進歩,専門医のためのアレルギー学講座)
田原 聡子渋谷 彰
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2013 年 62 巻 11 号 p. 1451-1457

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抄録

花粉症やアトピー性皮膚炎などI型アレルギーに分類される疾患は成人の約3人1が羅患しており,アレルギー制御は社会的急務である.I型アレルギーは,アレルゲン特異的なIgE抗体により誘導されるが,このIgE抗体は肥満細胞上に発現している高親和性IgE受容体(FcεRI)に結合する.その後,再び同じアレルゲンに暴露されると,アレルゲンは肥満細胞上のIgE抗体に結合し,これによりFcεRI が架橋され肥満細胞へ活性化シグナルが伝達される.活性化した肥満細胞は,細胞内に多数有している顆粒を放出し(脱顆粒),その中に含まれるヒスタミンなどの化学伝達物質が分泌される.この化学伝達物質によりアレルギー炎症が発症する.このため,アレルギー応答を制御するにはFcεRI を介した活性化シグナル伝達を阻害する機構を明らかにすることが重要である.我々は膜型受容体Allergin-1(Allergy inhibitory receptor-1;アラジン-1)を新たに同定し,この受容体が肥満細胞に強く発現しており,細胞質内に存在する抑制性シグナル伝達モチーフを介してIgE受容体を介した活性化シグナルを抑制することを見出した.このことは,Allergin-1がアレルギー治療の標的分子となる可能性を示している.本稿では,Allergin-1の構造およびI型アレルギー反応における生理的な役割について紹介する.

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© 2013 日本アレルギー学会
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