抄録
【背景】スギ花粉症患者の一部は,重症通年性アレルギー性鼻炎にも罹患し,また同時に多種類抗原に感作されている事も多い.そこで,今回,通年性症状のために後鼻神経切断術・下鼻甲介手術を施行された症例の中からスギ花粉症合併症例を抽出し,手術前後のスギ花粉飛散期の症状変化を検討することで,後鼻神経切断術・下鼻甲介手術のスギ花粉症に対する有効性と適応を明確にすべく検討を試みた.【対象と方法】2005年4月1日から2008年7月30日の期間に後鼻神経切断術かつ下鼻甲介手術を受けた重症通年性アレルギー性鼻炎もしくは好酸球増多性鼻炎・血管運動性鼻炎の中,スギ花粉症を合併した9症例を対象に2009年9月にアンケート調査(Numeric Rating Scale: NRSによる)を行った.【結果】スギ花粉飛散期における鼻症状NRSスコアは後鼻漏を除き術後有意に改善した.また,内服点鼻,点眼いずれも「使用量が少し減った」,「かなり減った」,「もしくはほとんど使用しなくなった」という回答であった.【考察】スギ花粉を含む多種類の抗原に感作され通年性に症状を呈する症例は,後鼻神経切断術・下鼻甲介手術の良い適応であると考えられた.