アレルギー
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原著
実地臨床における遷延性・慢性咳嗽診療の現状と課題
柿内 佑介松倉 聡清水 翔平張 秀一藤嶋 彬刑部 優希関口 綾香井上 大輔船木 俊孝山﨑 洋平楯野 英胤加藤 栄助林 誠渡部 良雄山口 史博横江 琢也相良 博典鹿間 裕介
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2018 年 67 巻 7 号 p. 931-937

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抄録

【背景・目的】遷延性・慢性咳嗽を主訴に医療機関を受診する患者は多い.特に咳喘息と感染後咳嗽が占める割合が多いが,その鑑別診断は容易ではなく,実地臨床では安易な吸入ステロイド(ICS,Inhaled corticosteroid)治療が見受けられる.

【方法】本研究では,ICS治療例を含めた遷延性・慢性咳嗽77例を後方視的に解析し,診断に有用な所見を考察した.

【結果】咳喘息39例,感染後咳嗽19例が含まれていた.咳喘息では感染後咳嗽と比較し,有意差を以って,咳嗽が夜間~明け方に多く,β2刺激薬による症状改善を認め,過去に同様の遷延性・慢性咳嗽を繰り返していた.呼気一酸化窒素濃度(FeNO,fractional exhaled nitric oxide)値は咳喘息で高い傾向があり,FeNO高値は咳喘息診断において特異度が高かった.一方,咳喘息と診断された症例をICS前治療の有無で比較すると,ICS前治療例で夜間~明け方に優位な咳嗽が消失し,FeNO値は低下する傾向を認めた.

【結語】診断的治療としてICSを投与する前に,問診とFeNOを併せて確定診断を行うことが重要である.

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© 2018 日本アレルギー学会
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