2019 年 68 巻 6 号 p. 681-690
【背景】本邦ではダニ皮下免疫療法において,従来はハウスダスト抽出液が使用されていたが,2015年より標準化ダニ抗原が保険適用となった.
【目的】小児への急速皮下免疫療法における標準化ダニ抗原(HDM群)とハウスダスト抽出液(HD群)の安全性,有効性を比較する.
【方法】診療録より後方視的に検討した.対象はダニ感作のある小児65例(HDM群27例,HD群37例).安全性として全身反応の頻度を比較した.有効性としてアレルギー性鼻炎及び気管支喘息における治療開始1年での症状・服薬スコアの減少率を比較した.さらに総IgE,ヤケヒョウヒダニ(Der p)特異的IgE及びIgG4も検討した.
【結果】両群間で治療開始前の背景に差はなかった.全身反応はHDM群44%,HD群14%でありHDM群で有意に全身反応が多かった.1年の治療期間におけるスコア減少率はアレルギー性鼻炎でHDM群57%,HD群40%,気管支喘息でHDM群66%,HD群36%でありHDM群で有意に減少率が高かった.HDM群でのDer p特異的IgG4は,HDM切替え前に比して有意な増加が認められた.
【結論】小児への急速皮下免疫療法において,標準化ダニ抗原はハウスダスト抽出液と比べ優れた効果を示すが全身反応のリスクが高い.