2021 年 70 巻 3 号 p. 204-209
症例は81歳,男性.201X-2年6月に近医にて慢性副鼻腔炎に対して辛夷清肺湯が投与され,約1カ月後に肝機能障害と胸部異常陰影をみとめた.辛夷清肺湯を中止したところ,いずれも改善した.同年10月に過敏性腸症候群に対して柴胡桂枝湯が投与され,2日後に発熱と呼吸困難があり,肺炎と診断された.抗菌薬で改善せず,ステロイド投与により改善した.退院後,他院にて辛夷清肺湯と補中益気湯が投与され,2日後に発熱し,漢方薬の中止で改善した.201X年2月に下痢に対して柴苓湯が投与され,約5日後に咳嗽が出現した.胸部CTで広範なスリガラス影をみとめ,呼吸不全もみられたことから,精査加療目的にて当科入院となった.臨床経過と気管支鏡検査,薬物リンパ球刺激試験の結果などから,柴苓湯の成分であるオウゴンによる薬剤性肺炎と考えられ,同薬剤の中止のみで改善した.これまで漢方薬による薬剤性肺障害の報告はあるが,複数の漢方薬で薬剤性肺障害をきたしたと考えられる症例は貴重であり,報告する.