1998年までインドネシア政府は, 政府食糧調達庁のもとで, 米の輸出入管理を独占的に行ってきた. この一環で, 食料自給の達成を目的とした政策が1980年代半ばまで続けられ, 米の国内価格は国際価格に比べて安定していた. しかしながら1993年以降, 米の生産量の増加が鈍化し, 輸入量の増大と自給率の低下をもたらした.
1997-1998の食料・通貨危機を経て, インドネシア政府は米の貿易自由化に同意し, 民間部門が無関税で米の輸入を行うことを許可した. これにともなって, 政府が米の国内価格を安定させる力を失ったことに対する懸念がでてきた. そこで生産者と消費者の利益のバランスを保つために, いくつかの米に関する政策が施行された. 2000年には, インドネシア政府ははじめて米の関税政策を導入した. この政策は余剰米を生産できる生産者を優遇する一方, 飯米にも事欠く生産者のような低所得世帯にとっては不利なものであった. 本研究は部分均衡モデルによって, 関税が生産者や消費者のウェルフェアにもたらす影響を分析する.