富山県氷見市泊洞穴出土の下顎骨を欠く頭蓋と肋骨片からなる人骨(以下,泊洞人)はそのフッ素含量が完新世前期から更新世末期に比定される(松浦,1985)。この人骨は20歳代前半の男性のものと推定される。頭蓋は全体的に小型である。脳頭蓋の特徴は短•高頭,顔面頭蓋のそれは低•広上顔である。更新世末期から現代に至る各時代人集団との形態学的比較分析によれば,泊洞人頭蓋の全体的な特徴は縄文時代人に,特に上顔面部などは早•前期の縄文時代人に近似する。このことからその所属年代は少なくとも縄文時代,多分その前半にまで遡れるものと考えられる。しかし,さらに更新世末期まで遡れるか否かは現時点では言及できない。