Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
Print ISSN : 1344-3992
ISSN-L : 1344-3992
シンポジウム特集記事
咬頭はどのようにしてできるのか
―歯の発生・変異・進化と分子メカニズムからの考察―
田畑 純近藤 信太郎
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 114 巻 1 号 p. 57-62

詳細
抄録

発生過程の歯を歯胚(しはい)といい,将来の歯列ができる場所に歯の数だけ現れる。そして,開始期,蕾状期,帽状期,鐘状期初期,鐘状期後期と呼ばれる発生段階を経て,単純で小さかった歯胚が,より複雑で大きな歯となっていく。硬組織が形成されるのは鐘状期後期であるが,歯冠の形態そのものは鐘状期初期までにできあがるので,歯の形の変化などは全て開始期から鐘状期初期までに生じた何らかの変化が原因と考えられる。歯の変異には,歯質,歯の概形(=外形),歯の大きさ,歯の数,歯の表面の凹凸の5つに大別して整理できるが,このうち,歯の概形,大きさ,数については帽状期までに決まり,歯の表面の凹凸については鐘状期初期に決まることが考えられた。また,こうした形態的な特徴を支配していると思われる分子の候補として,HGFとBMP4が挙げられた。歯の表面の凹凸については,さまざまな構成要素があるが,咬頭形成に関しては,咬頭頂の位置が決まることと,咬頭間の溝の役割が重要であり,前者には二次エナメル結節が,後者にはHGFなどの細胞増殖因子の働きが重要であることが考えられた。

著者関連情報
© 2006 日本人類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top