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Anthropological Science (Japanese Series)
Vol. 120 (2012) No. 1 p. 15-46

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http://doi.org/10.1537/asj.120709

原著論文

筋骨格ストレスマーカー(MSMs)を用いて,先史・古代人の日常的な活動を古人骨から推察するという研究は数多く行われている。しかし,その一方でMSMsの有効性そのものを疑う研究も提出されている。そこで,本稿ではMSMsから活動の復元を行うことの有効性を検討した。対象資料は考古学・文献記録・民俗調査から漁撈活動を行っていたと想定される吉母浜中世人骨と,埋葬様式より身分の推定が可能な江戸市中出土人骨,及びその比較資料として久世家などの出自の特定が可能な江戸時代人骨,合わせて313体を用いた。上肢(鎖骨・上腕骨・橈骨・尺骨)および下肢(大腿骨・脛骨)に付着する筋・靭帯・腱付着部29部位を対象とし,それぞれの発達度をスコアによって評価した。まず,吉母浜中世人骨では先行研究で指摘されている「肋鎖靭帯のスコアが顕著に高く,次いで大胸筋や三角筋のスコアが高い」という漁撈的特徴を示すことを確認した。次に江戸時代人骨の各埋葬様式群のMSMsの類似性や,男女差の検討を行った。これらの分析の結果,武士階層とされる埋葬様式の被葬者のMSMsは互いに類似し,庶民層とではMSMsのスコアの発達度が異なる傾向をみせることが確認された。具体的には,武士層とされる埋葬様式群では,下肢8部位のMSMsの発達度に類似性がみられ,その特徴は,剣術・弓術・馬術などの武芸や立ち居振る舞いなどの所作によって形成されうるものであると考えられた。本研究の結果は,MSMs分析が生活様式を復元する有力な方法の1つとなる可能性を示唆するものである。

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