Anthropological Science (Japanese Series)
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2021年に実施された日本人類学会会員に対する研究と教育の現状に関するアンケート調査について
蔦谷 匠市石 博中務 真人松本 晶子山極 寿一河村 正二
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2022 年 130 巻 1 号 p. 85-96

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抄録

日本の学会や学術研究を取り巻く状況は年々厳しくなっている。そうした状況に適切に対処していくための基礎データを得る目的で,2021年8–9月に,日本人類学会の会員に対してウェブ調査を実施した。(1)会員の職位による研究活動や教育活動の状況,(2)科研費小区分「自然人類学」に対する意識と申請状況,(3)会員の科研費審査への関与状況,(4)自然人類学の下支えのための方策についてのアンケートに対し,会員の23%にあたる123件の有効回答があった。分析の結果,任期の定めのない常勤職では研究・教育活動に割ける時間的余裕が圧倒的に不足している,有期雇用者(ポスドク,テニュアトラック,非常勤講師など)は研究活動に際して専門的な設備やフィールドにアクセスしづらく所属組織からの理解も得づらい,学生では研究に対する意欲を維持しづらい,という回答傾向があった。科研費小区分に「自然人類学」があるほうがよいと答えた回答者の割合は75%だったが,過去5年間以内に研究代表者として「自然人類学」に科研費を申請したことがある回答者の割合は34%だった。全体的に回答者は科研費の審査に対し誠実かつ協力的だったが,科研費の審査システムに改善が必要であると答えた回答者は半数を超えた(53%)。自然人類学を下支えするうえで学会がより力を入れることが望ましい方策については,関連する学会との共同企画・連携,および,若手研究者支援を選択した回答者の割合がともに最多(46%)となった。

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© 2022 一般社団法人日本人類学会
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