チリイソウロウグモは本州以南に広く分布し, 宿主利用が地域的に変化することが知られている.本研究では,発育可能期間の長さや宿主利用がチリイソウロウグモの生活史に与える影響を明らかにするため,房総半島,奄美大島,沖縄地方(久米島と沖縄本島)の緯度勾配に沿った3地域を対象に,成体サイズと生活環(年あたりの世代数)の違いを明らかにした.成体サイズは,奄美大島,沖縄地方,房総半島の順で大きかった.生活環については,体サイズと発育段階の季節推移から,南に行くほど世代数が増える傾向がみられた.つまり,房総半島では1化,奄美大島ではほぼ1化,沖縄地方では2化,ないしは多化性であると推測された.地域間で体サイズに違いが生じる理由は,発育可能期間や餌量,化性の違いを反映していると考えられた.