2012 年 55 巻 4 号 p. 207-217
学校の教室では, スピーチ・コミュニケーションを介して知識の伝達, 意見の交換, 経験の共有がおこなわれる。騒音や残響といった音響環境が劣悪な場合は, その情報伝達量は大きく低下し, 学習による知識構築や読み書き能力の発達を阻害する可能性がある。ここでは, 教室の音響環境を表す物理的指標の残響, 騒音, Speech Transmission Indexについて概説し, それらの測定事例や, 最近の教室における音響性能のガイドラインを紹介する。残響と騒音は, 難聴者の音声知覚を健聴者のそれよりより大きく劣化させる。最後に教室の音響環境を改善するための音響設計や, 補聴器周辺機器, 拡声システム, 補聴器の機能などの聴覚補償についての方法について述べる。