2013 年 56 巻 2 号 p. 186-192
3歳児聴覚検診の定着化と新生児聴覚スクリーニングの導入, 遺伝子解析による原因解明の劇的進歩, 人工内耳医療を含めた補聴選択肢の拡大, 通級指導の開始など難聴児を取り巻く環境が近年大きく変化している。2012年5月末の時点で当院が関わっている両側難聴児109名の背景と医療内容を確認し, 地域耳鼻咽喉科診療所に求められている医療を検討した。その医療は, 聴覚保全のための聴覚管理・補聴器装用指導・書類作成で8割を占めた。聴覚管理と書類作成を行っている対象児の大半が純音聴力検査で評価可能な学童であった。各難聴児が受けるべき個別化医療の中で, 地域の耳鼻咽喉科診療所が担うべき医療は数多く存在し, 難聴児保護者が身近に相談できる情報提供の場として果たす役割は大きい。さらに, 見逃されている難聴児を拾い上げる重要な検診の場となるべきと考える。その責務を果たすために, 難聴児医療への情報収集に努めなければならない。