2013 年 56 巻 3 号 p. 212-217
要旨: 若年者と高齢者を対象に, 単語識別におけるアクセント情報の影響について検討した。標準的なピッチアクセントである標準アクセントと, 第1, 第2母音のピッチパターンを逆転させた誤アクセントの2種で録音した2音節単語を, 至適音圧 (40dBSL) と低音圧 (20dBSL) の2種の音圧条件で提示し, 対象者に聴取させ, 聴取した単語を書き取らせた。この結果, 単語識別においては, 加齢, 提示音圧, 誤アクセントそれぞれの影響によって正答率の低下と誤答率の上昇をみとめた。特に高齢者では, 提示音圧の低下と誤アクセントによる単語識別への影響がみられたが, 年齢, 聴力, 語音明瞭度といった個人属性との関係はみられなかった。一方若年者では, 提示音圧低下による誤アクセントの影響が大きかった。高齢者の単語識別における韻律情報の利用については, 若年者とは異なる傾向を認め会話時などの配慮の必要性について指摘した。