2014 年 57 巻 4 号 p. 244-249
要旨: 視覚と聴覚の両方の障害が重複しているいわゆる盲聾の患者は, コミュニケーションツールが限られるため日常生活が困難になることは容易に想像がつく。視覚障害が先行して主なコミュニケーション手段が聴覚である患者が後に高度な聴覚障害となった場合, コミュニケーションツールを失ってしまうため患者の精神的苦痛は計り知れない。そのような盲聾患者4例に人工内耳植込術を施行した。
症例は全例成人で, 後天性視覚障害および両側高度感音難聴の症例である。2例は弱視であり人工内耳術前は大きな文字の筆談ができたが, 残りの2例は全盲であり術前は手書き文字を用いていた。
4例中3例は手書き文字または筆談など聴覚以外のツールを用いずに会話可能となった。残りの1例については semiclose set の質問が弁別できる程度だが, 筆記を減らすことができた。後天性の盲聾患者に対して人工内耳は有用であった。