2016 年 59 巻 3 号 p. 198-206
要旨: 本研究では, 先行して呈示される音源の画像と後続する環境音が一致するか否かを判断するプライミング課題を行い, 聴覚障害者の環境音認知における聴取経験と聴覚イメージとの関係を明らかにすることを目的とした。 その結果, 参加者10名のうち8名において, 聴取経験が多いと答えた刺激の半数以上で, 画像と環境音が一致条件する条件で反応時間に短縮がみられた。 また, 反応時間の短縮と聴取経験との関係をみると, 聴取経験が多い刺激では一致条件の反応時間が有意に短縮する一方で, 聴取経験の少ない刺激では反応時間の短縮がみられなかった。 これらの結果から, 聴取経験が多い環境音は, 音源の画像からその音の聴覚イメージを想起することが可能であったため, 音源の同定が促進され, 一致・不一致の判断に要する反応時間が短縮されたと考えられた。 今後は, イメージを形成しやすい音の特徴や, どのような経験を積めば良いのかという点について検討する必要がある。