2017 年 60 巻 2 号 p. 136-142
要旨: 本研究の目的は人工内耳を装用する高校卒業者の大学進学の現況とその関連要因を解明することであった。対象は東京医科大学病院にて聴覚管理を行う, 2012年3月から2016年3月に高校 (ろう学校高等部を含む。) を卒業した者のうち, 人工内耳の装用経験が5年間以上あり, かつ卒業後の進路が確認された者 (追跡可能者), 計34人である (男性16人, 女性18人)。 調査時における対象者の年齢は19.6歳 (平均), 人工内耳の植え込み年齢は6.0歳, 装用期間は13.5年間であった。植え込み年齢と装用期間に加えて, 小学校就学時の装用閾値, 語音明瞭度ならびに理解語彙指数, 高校卒業時の装用閾値と語音明瞭度の成績を, 大学進学群と非進学群で比較した結果, 進学群では就学時の理解語彙指数が良好である傾向が効果量から示唆された。その他, 高校卒業後の進路が不明の者では, 就学時の理解語彙指数が有意に低く, 効果量からは高校卒業時の装用閾値が重篤であり, 両時点の語音明瞭度が低い傾向にあることが示された。