要旨: 高齢者の社会参加や交流の推進には, 多くの高齢者が直面する難聴への対策が緊要である。 難聴はさまざまな不利益のリスク要因であるとするエビデンスが蓄積され, 世界保健機構2017のレポートにおいては難聴者の雇用環境が危惧され, アルツハイマー病協会国際会議2017では, 難聴は認知症に関する9つの修正可能なリスク要因のひとつに挙げられた。 対策としての補聴器の効果については, 雇用や就労, うつや社会的孤立, 認知機能などの側面について, 米, 英, 豪, 仏など各国から多種多様な研究デザインで評価を行っているものの, 結果は必ずしも一様でない。 おそらく聴覚以外の機能に対する補聴器の効果を実証するには, 長期間の観察と数多くの対象者を必要とするのではないかと推察する。 しかし, 世界最高の長寿国であるわが国において, 高齢者の難聴対策, 補聴器活用は, 健康長寿社会実現のために, 優先性の高い国民的課題と考える。