2019 年 62 巻 3 号 p. 224-234
要旨: 全国聴覚特別支援学校100校を対象に 0~2 歳児の乳幼児教育相談における早期介入の状況について検討した。99校で1,831名の聴覚障害乳幼児の定期的指導が実施され, 新生児聴覚スクリーニング検査 (NHS) 受検率は84.7%であった。定期的相談児は, 軽・中等度難聴が38.3% を占め, 他障害を併せ持つ幼児が22.7% と多様な支援に対応していた。聴覚補償として89.1% で補聴器指導を行い, 補聴器装用開始後の補聴器常用 (4h/日以上使用) は71.2% と困難を示していた。人工内耳装用は19.5%で, 0歳児 bimodal 方式, 2歳児で両耳装用が増加した。教育活動時には, 76.2% で音声言語と手話のトータルコミュニケーションを用い, 2歳児に音声言語の使用順位が高まった。教育指導は 0歳児から集団と個別方式を用い, 地域差があるが両方式で平均2回/月程度実施され, 2歳児で頻度が増加した。
乳幼児教育相談において, 聴覚障害児の家族, 聴覚障害児, 教師, 社会連携の領域において早期介入の意義について指摘された。NHS の普及により, 聴覚障害児の早期介入は増加傾向を示し, 早期診断後の専門的な介入に関する社会的体制と施策整備が喫緊の課題であると示唆された。