2020 年 63 巻 2 号 p. 109-114
要旨: 2019年5月に日本ではじめて耳鳴診療ガイドラインが発刊された。この耳鳴ガイドラインでは, エビデンスに基づき推奨されており, 認知行動療法は強く推奨されている。しかし, 日本ではうつ病などに対して認知行動療法は行われているが, 耳鳴に対してはまだ行われていない。
日本で耳鳴に対する認知行動療法が行われていない理由の1つに, 海外では精神科医も耳鳴治療を行うという治療者の違いがある。また, 本邦では認知行動療法を行う精神科医も少なく, 認知行動療法が保険適応されているのは, うつ病など限られた精神疾患であることも要因であろう。現在, 慢性疼痛などへの効果など認知行動療法は注目されてきている。今後本邦においても耳鳴に対して認知行動療法が行われることを期待するとともに, 耳鼻咽喉科医ができる耳鳴の認知行動的介入 (アプローチ) として, 教育的カウンセリングや認知行動療法的アプローチをしっかり行っていくことが重要である。