2020 年 63 巻 6 号 p. 509-517
要旨: 2004年から2020年までに当科で人工内耳手術を行い, 2年以上経過観察した, common cavity (CC群) 9例9耳, incomplete partition type I (IP-I群) 12例12耳, incomplete partition type II (IP-II群) 11例11耳の計32例32耳と, 対照群として設定した GJB2 遺伝子変異による小児症例19例19耳の人工内耳マップの特徴や語音聴取成績との関連を検討した。
IP-II 群の人工内耳マップでは, 使用電極の減少や顔面神経刺激は認められず, ラウドネス知覚に必要な電荷量も対照群と有意差はなく, 語音聴取も良好であった。IP-II 群では, 蝸牛正常例と同じマップの作成手法が相応であると考えられた。一方, CC 群や IP-I 群の8例の人工内耳マップで, 聴性反応が得られず使用電極の減少がみられた。ラウドネス知覚に必要な電荷量は対照群と比較して CC 群で同等なものから最大で5倍, IP-I 群で同等から最大で2.5倍の大きさが必要であった。そして CC 群や IP-I 群の語音聴取成績ではばらつきがあるものの, 全例で60%以上の単語聴取成績が得られた。