2025 年 68 巻 2 号 p. 205-210
要旨: 本研究では, 成人期以降の LiD 症状を検査結果にて明らかにするため, 従来の検査方法を基に難度を変化させた検査課題を設定し, 新たな評価方法の確立が可能か検討した。対象は, LiD 群, 健聴者群, 各16名である。対象者に対して, 発話速度が通常と早口の2条件からなる両耳分離聴課題を作成し実施した。その結果, 両群共に発話速度が早くなると聴取能は有意に低下した。しかし, 各発話条件における対象群間の結果を比較したところ, LiD 群は健常群に比し, 各条件で正答率は低下するものの, 有意な差は認めなかった。本研究では, 発話速度を早くすることで検査の難易度を上げることはできたが, LiD 群と健聴群において聴取能に差はなく, LiD 群の症状を明らかにする評価方法の確立には至らなかった。今後は, 検査手法の更なる検討や, 質問紙評価や他覚的評価の併用などの工夫を行い, LiDの本質的な生起メカニズムについての更なる検討を行うことが必要と考えられた。