2025 年 68 巻 4 号 p. 274-285
要旨: 聞き取り困難 (LiD) に対して包括的評価を行い, 「聞こえにくさのチェックシート」との間にどのような関連があるのかについて検討を行った。
対象は, 基本的な聴力検査を行ったが異常を認めず, 聞こえにくさのチェックシートにて109点未満であった9例とした。評価は, APT, 標準注意検査法 (CAT), S-PA 標準言語性対連合学習検査, Rey の複雑図形検査, SALA の無意味語の復唱, AQ 日本語版, CAARS 日本語版, 日本語版 SDS を施行した。
APT では, 両耳分離聴検査, 早口音声聴取検査, 雑音下聴取検査, 複数音声下聴取検査にて障害域の項目数が多かった。CAT ではすべての項目で障害域に達した症例を認めた。AQ 日本語版1例, ADHD 指標1例, 日本語版 SDS 3例で障害域であった。また, 聞こえにくさのチェックシートと発達および性格特性と有意な相関があり, 患者本人の聞こえにくさの症状は, APT や神経心理学的検査よりむしろ, 発達および性格特性との関連が高い可能性がある。