1989 年 32 巻 3 号 p. 172-181
聴力正常で自発耳音響放射を有する者を中心にした9例18耳を対象に, 自発耳音響放射と誘発耳音響放射を測定した。 自発耳音響放射を有する耳では誘発耳音響放射が遷延する傾向にあったが, いずれの例でも耳鳴は感じなかった。 この誘発耳音響放射の遷延は自発耳音響放射の周波数あるいはそれより高い周波数刺激で観察されやすい傾向にあった。 誘発耳音響放射の波形は刺激後早期 (-10ms) は刺激音に同調するが, その後 (12ms-) 自発耳音響放射に同調する。 そしてこの自発耳音響放射への同調が遷延する誘発耳音響放射であると推定された。 そして自発耳音響放射より高い周波数で刺激することで, 基底板の自発耳音響放射特徴周波数領域より短い部分を振動させ, その力が加わることにより, 基底板が自発耳音響放射の位相で振動するのではないかと推察された。