AUDIOLOGY JAPAN
Online ISSN : 1883-7301
Print ISSN : 0303-8106
ISSN-L : 0303-8106
ラットにおける内側膝状体膝上核から大脳皮質への投射 -順行性標識法および螢光色素二重標識法による検索-
黒川 泰資斉藤 等吉田 和典山本 哲朗岡 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 34 巻 6 号 p. 814-823

詳細
抄録

内側膝状体の一部とみなされている膝上核は聴覚皮質への投射の一部分を形成しているが, その他の皮質野との関係はまだ十分に解明されていない。 本実験ではラットを用い, 順行性トレーサーのPhaseolus vulgaris-leucoagglutinin (PHA-L) と螢光色素二重標識法による検討を行った。 その結果, PHA-Lによる標識終末は側頭皮質では注入部位と同側の一次聴覚野 (AI) と聴覚連合野と島皮質の第I層に広範な分布を示し, 第IV層の終末は聴覚連合野を中心にして比較的限局した分布を示した。 前頭皮質では一次運動野 (MI) とそれ以外の前頭野の比較的尾側部で第I層に分布する終末が広範囲に認められた。 第IV層に分布する終末はさらに尾側部に限局していた。 また, 前頭皮質と側頭皮質に注入した螢光色素に二重標識される神経細胞は膝上核には観察されなかった。 以上より, 前頭皮質に入力される聴覚情報は標識終末の局在分布から, 音刺激に反応して発現する眼球運動や頭部運動に関連し, その投射は側頭皮質と前頭皮質の並列経路で, それぞれ違った情報を処理すると推察された。

著者関連情報
© 日本聴覚医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top