一企業 (第3次産業) で1990年に行われた選別聴力検査 (総受検者数1,697名) の結果を分析し, 以下の結果を得た。 1) 全従業員に対する選別聴力検査受検率は約90%であつた。 2) 有所見率は10.1%であつた。 3) 有所見者の85.5%に標準純音聴力検査を施行し得た。 4) 有所見率は加齢と共に高くなる傾向が認められた。 5) 選別聴力検査の精度は1kHzでは89.1%, 4kHzでは82.0%であつた。 6) 有所見耳の難聴の種類は感音難聴が最多であつた。 7) 有所見耳の聴力型は高音漸傾型が最多であつた。 8) 有所見耳の最終診断名を検討すると正常は18.4%のみであり, 残りの81.6%では何らかの耳疾患が認められた。 このうち約1/3で原因が明らかとなつた。 9) 有所見耳に占める外科的治療適応耳の頻度は6.1%であった。 10) 老人性難聴が選別聴力検査で所見ありと判定される頻度は40・50歳代男性では17-25%と推定された。